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熱さだけじゃない!ハーブの香りで深くととのう「ハーバルリチュアル」の世界

熱さだけじゃない!ハーブの香りで深くととのう「ハーバルリチュアル」の世界

日本のサウナといえば、ドライタイプが主流で「とにかく熱い」「汗を一気にかく」といったイメージを持たれる方が多いのではないでしょうか。確かに、90℃以上に設定されたサウナ室で一気に汗を流し、水風呂でクールダウンするという流れは定番かもしれません。しかし、「熱すぎるサウナはちょっと苦手…」「少し息苦しく感じて長く入っていられない」という声も耳にすることがあります。

そんな方にも試しやすいサウナのスタイルとして、近年注目を集めているのが「ハーバルリチュアル」というプログラムです。ハーブやアロマの香りでリラックス効果を高め、サウナ室内をやさしい蒸気で満たしてくれるこの方法は、音楽を流しタオルやファンで扇いで盛り上げるエンターテインメント性の高いアウフグースとは目的やスタイルが少し異なり、香りと静けさを重視しどこか儀式めいた感じがするのが大きな特徴です。

ハーバルリチュアルとは何か?
~ハーブの香りでやさしく包む儀式~

アウフグースとの違い

ハーバルリチュアルはアウフグースの一種でありながら、その内容と目的が少し異なります。一般的なアウフグースは、サウナストーブの上にアロマオイルを含ませた水やアロマを含んだキューゲルなどを使い蒸気を発生させ、タオルや扇子で扇ぎ、熱と香り、風などを楽しむエンターテインメント性の高い手法です。アウフギーサーや熱波師のパフォーマンスを目当てに、(特に日本では)短時間で強烈な発汗を促すことも多いため、盛り上がりやすい半面、熱さに弱い方には「少し刺激が強い」と感じられるかもしれません。

一方のハーバルリチュアルは、サウナストーブにフレッシュハーブやドライハーブを使いロウリュし、やわらかい扇ぎ方で蒸気をふんわりと拡散します。目的は、ハーブの香りや効能を活かしてリラックスやリフレッシュ、癒しを得ること。エンタメ的要素を抑えた“儀式”というべき静けさのなかで、自然のやさしい香りに身を浸してもらうのが大きなポイントとなります。

「ハーブの儀式」でリラックス度を高める理由

ハーバルリチュアルでは、ミントやラベンダー、ユーカリなどさまざまなハーブを使用します。蒸気に溶け込んだハーブの香りを深く吸い込むと、鼻や喉がスーッと楽になる感覚や、フローラルな香りで気持ちが落ち着く感覚を体験しやすいのが特徴です。ハーブの他にもお香などを使うケースもあります。また、香りは脳にダイレクトに働きかけやすいため、サウナの高温環境が苦手な方でも「思ったよりも居心地が良い」「時間を忘れて楽しめる」と感じられるのも、そのリラックス効果ゆえと言えるでしょう。

鳴海慎吾
鳴海慎吾

個人的にはセージのお香の香りがすごく好きです。

ハーバルリチュアルの基本プロセス

ハーバルロウリュ

まずはサウナストーブにフレッシュハーブやドライハーブ使い、ゆっくりと水をかけるロウリュを行います。熱せられたストーンが水分を瞬時に蒸発させ、その蒸気にハーブの香りがしみ込むという流れです。直接ストーンに乗せてしまうと焦げてしまうので注意です。エンターテインメント性を重視するアウフグースと違い、一気に盛り上がるよりも、落ち着いた雰囲気で蒸気と香りを紡ぐように行うのが特徴となります。

ゆっくりとした扇ぎでサウナ室全体を満たす

アウフグースではタオルを勢いよく振ってサウナ室の温度をぐっと上げたり、強い風で熱波を浴びせるシーンがよく見られます。しかし、ハーバルリチュアルでは扇を使いながら、あえてやさしい動きで落ち着いた蒸気を行き渡らせます。激しく仰ぐと一瞬で室温が上昇し、ハーブの香りをかき消してしまうおそれがあるため、ゆっくりした動作でサウナ内を巡回することが大切です。

ハーブの香りと湿度を同時に楽しむ

サウナストーンから発生する蒸気にハーブのエキスが溶け込むことで、サウナ室内の湿度は高く保たれ、体感温度が上がりすぎないようコントロールしやすくなります。ドライサウナに慣れている方には「こんなに蒸気があると暑そう」と思うかもしれませんが、実際にはアウフグースほど鋭い熱さがこないため、じんわりとした温かさの中で汗が出る感覚を味わえます。これがハーバルリチュアルならではの、やわらかい気持ちよさの秘密でもあります。

ハーバルサウナの魅力

蒸気を自分たちの手でコントロールできるハーバルサウナでは、適度な湿度が体感温度を和らげ、リラックスしやすい状態へ導いてくれます。また、ハーブの香りには気分をリフレッシュさせる効果が期待できます。たとえばペパーミントやユーカリのような清涼感あふれるハーブは、呼吸が通る感覚を得やすく、息苦しさを和らげてくれることも。ラベンダーやカモミールなどの優しい香りを選べば、気持ちが落ち着いてゆったり過ごせるので、気分転換にもってこいといえるでしょう。

ハーバルリチュアルを無理なく取り入れる方法

温度設定が低めのサウナを選ぶ

通常のドライサウナでは90℃以上に設定されている場合が多いため、よほど慣れていないと息苦しく感じてしまうこともあります。一方、ハーバルリチュアルを実施しているサウナ施設では、70℃前後に設定していることがあり、熱さによるストレスを軽減しやすいメリットがあります。

こまめな水分補給を忘れずに

どんなサウナでも大切なのが水分補給です。ハーバルサウナだからといって発汗が少ないわけではなく、気づかないうちに汗をかいている場合もあります。特にハーブの香りがリラックス効果を高めてくれる分、「もう少し入っていようかな」と居心地の良さに長居しがち。脱水を防ぐためにも、室内に入る前や休憩中に積極的に水分をとりましょう。

目をつむり、ハーブの香りと体の感覚を味わう

サウナ室に入りハーブの香りが広がりはじめたら、意識的に目を閉じてみるのもおすすめです。視覚情報を遮断することで、鼻や肌、耳などほかの感覚が研ぎ澄まされ、ハーブの香りや蒸気のやわらかな温もりをよりいっそう深く楽しめるようになります。外の刺激をシャットアウトして自分だけの“静かな世界”をつくることで、リラックス感と集中力がさらに高まるでしょう。

自分に合ったハーブを見つける楽しさ

ハーブとひとくちに言っても、その種類は実にさまざま。清涼感を求めるならミント系、シャキッとしたいときはレモングラス、リラックスを深めたいならラベンダーやカモミールなど、香りの系統や作用も千差万別です。施設によっては複数のハーブやアロマオイルを用意していることがあるので、気に入った香りを探してみるのもハーバルリチュアルの楽しみ方のひとつです。

 ヴィヒタでさらに広がるハーバル体験

ハーバルリチュアルの応用として、白樺の枝葉から作られる「ヴィヒタ」を肌に軽く当てる方法があります。ヨーロッパを中心に発展し、日本でも実践する施設が増えつつあるスタイルです。これを使って体をパタパタと撫でることで、血行を促進しつつ、ハーブの香りがさらに広がるのが特徴です。自分でやるのは難しそうに見えますが、実は慣れれば優しく当てるだけでも十分気持ちよい刺激が得られます。

ハーバルリチュアルの人気の高まり

ハーブを使ったプログラム『ハーバルリチュアル』は、まだまだ日本でうけることができる施設は少ないですが、一部で大会が開かれるほど愛好されています。事実、海外ではハーバルリチュアルの技術や演出を評価する「ハーバルカップ」というイベントが2015年から行われ、2024年からは日本でも予選を行っています。参加者が独自のハーブミックスや扇ぎ方を提案する様子も見受けられます。こうした場があること自体、リラックスと癒しを重視したサウナの在り方が多くの人々に求められている証拠とも言えるでしょう。

とはいえ、そこまで本格的にこだわらなくても、サウナ室にふんわり漂うハーブの香りを感じながら、心身を整える時間を楽しむだけで十分。その柔らかな蒸気と香りに包まれるひとときこそが、ハーバルリチュアル最大の魅力です。

やさしい熱と香りの“儀式”で、心も体もほぐれるサウナ体験を

ドライサウナの「とにかく熱い」イメージに苦手意識をもつ方でも、ハーブの香りがほどよく刺激を和らげ、体と心をリラックスへ導くのがハーバルリチュアルの真髄です。アウフグースのように派手な演出は少なくとも、儀式的な落ち着きのなかでハーブ独自の香りと蒸気をゆっくり楽しめるため、サウナ初心者や高温がきついと感じる方にはうってつけのスタイルでもあります。

もし興味を持たれた方は、ぜひ近隣のサウナ施設を探してみてください。ハーバルサウナのサービスを提供しているところも増えてきており、事前に予約やスケジュールを確認するとスムーズに体験できます。ドライサウナでは味わえない、ハーブのやわらかな香りと儀式のような静粛な空間。それは、心も体もほぐし、いつのまにか不思議な感覚でととのう世界へと誘ってくれるはずです。

強い熱によるストレスとは違うアプローチで、サウナライフがさらに豊かになるかもしれません。ここまで読んでくださった方が、ハーブの香りに包まれながら、やわらかな汗を流し、なめらかな空気のなかで自分なりのととのう感覚を見つけていただけたら嬉しい限りです。

宮崎県内でハーバルリチュアルを受けるには?

宮崎県内でハーバルリチュアルのサービスを気軽に受けられる施設はありませんが、宮崎第一ホテルの『サウナMIYAZAKI』や『SAKURA SPA&』のイベントにてたまにハーバルのプログラムを実施しています。

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